2008-10-15

肩書き

テレビとか新聞とか見てていつも奇妙に思うのは、例えば何か罪を犯してとっ捕まった人の紹介する時には、必ずそいつの職業とか肩書きとがセットになっている事だ。
例えば(この人は犯罪者ではないが)こんな具合だ。














まあ、確かにこの人物はつい最近まで肩書き通りのシノギをしてきたわけだし、断腸の思いでそれを辞め、空虚感に耐えきれず例えば駄菓子屋でチロルチョコ一個万引きしたとしても、誰がそれを責められようか?
従ってこれは何となく納得できる。

これはどうか。













こんなに努力したのに、俺はどうしても職に就けねえ。
なけなしの金をはたいて背広新調して面接に望んだのに、誰も俺を雇ってくれねえ。
面接官は俺が話し出す前に「出口はあっちです」等と抜かしやがるし、くそ、おりゃあ一体どうすりゃいいんだ!
ああそうさ、だからやっちまったよ。
世の中の理不尽さにむかっ腹がたって、やけっぱちになって、憂さ晴らしの為に、やっちまったよ。
へっ、工事現場に置いてあったピカピカする赤いランプを盗んでやったぜ、14本もな。
だけどな、暫くたったら、それに入っていた電池から液漏れしやがって、疊が全部ぐずぐずになっちまったぜ(*)。

確かに、職業名を名前に添えるのは犯罪のイメージを補完するのに役立つようだ。
しかし「無職」というのが果たして職業名になるのかどうかについては、いまだ学会で意見が統一されていない現状に触れざるを得ない。

それはさておき、これはどうか。













ワシは確かに、会社の金で骨董品を買ったよ。女も買ったし、私腹を肥やした。
役人に賄賂もかましたし、客も騙した。
しかし、この会社は苦労して苦労してワシがここまでデカくしたんじゃ、そのぐらいいいだろう。
なにぃ、会社の名前だぁ?
オマエ知らんのかぁ?
暴力的詐欺ぼったくり会社として世界中にその名を馳せたクラシアンってんだ、良く覚えておきやがれこのやろう。

これはどうか。













職業柄、麻薬が手に入りやすいんでね。
最近心労がたまった友人がいてね、だから彼に無料で横流ししたんだね。
いや、別に悪い事したとは思ってないね。
だって、人の心を癒すのも医者じゃないかね?

どうやらこの人は文末を「ね」で締めるのが好きらしいが、それはこの項に関係のない事だね。

ではこれはどうか。













この肩書きは今までのとは傾向が明らかに異なる。

バス会社

その人物が所属する会社の一般名詞である。
実はさっきまでテレビを見ていたのだが、今日(2008/10/15)は年金の振込日で、振り込め詐欺が多発すると予測された為、静岡のバス会社がバス内で「携帯番号変えたというのは詐欺の手口」みたいな放送を流すというニュースをやっていた。
そのバス会社に勤務する人がコメントしていたのだが、その人の映像にあわせて表示されていたのが「バス会社 伊藤一郎」みたいなものだったわけだ。
「バス会社」という、一般的には組織を示す呼称を肩書きとして使う事が許されるというのに私はかなりのショックを受けた。
例えばあなたが何か犯罪を犯してメディアにでちゃったとする。
その時あなたを紹介する写真の下には、

「自動車販売会社 山田太郎」

と表示される。

「青果小売り会社 田中次郎」
「振り込め詐欺専門会社 山田三郎」
「非営利法人 鈴木四郎」
「国際的犯罪組織 フー・マンチュー」

これは変だろう。
いかにあなたが犯罪者とはいえ、凄くアンフェアだと感じ「俺は『国際的犯罪組織』そのものじゃねえ」と叫びたくもならないかい?
そんな呼び方されるのなら、いっその事、
「強姦魔 ○野○兵衛」
と、ストレートに呼ばれた方がすっきりするわい、と叫びたくもなるだろう。
「だからオマエは何が言いたいんだ」という事を言われても私は困るだけだ。
私は今、話題に困っていて、適当に思いついたネタをただ徒にこね回しているだけなのだ。
文句を言ってもらっても、それは筋違いというものだろう。

















(*)
筆者の小学生の頃の実体験。
母親にこっぴどく怒られた。

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