2010-09-11

湘南新宿ライン グリーン車での我が闘争 7

その名も「好色と暴力の総合紙『東京スポーツ』」。
通称「東スポ」。
己が発売される地域により、我が名を平気で使い分けるイカした野郎だ。
中京スポーツ・九州スポーツ等々、変幻自在なイカれた野郎だ。
それを開く。
大きく開く。
ことさらにバサバサと音を立ててページをめくってみる。
エロページが周囲に見えるように工夫してみる。
そして時々お酒を口にしてみる。
さらに少し、リクライニングの角度を深くしてみる。

全くの無反応である。
おかしい。
予定では、こちらをちら見して、顔をしかめる筈なのだが。
いや、多分刺激が弱いのだろう。
きっとそうだ。

この辺りで汽車は副都心に向け、動き出した。
2階席が、ゆったりと揺れ始めた。
がたこんがたこん。
発車に前後して、柔らかな声で車内放送が流れている。
篦棒に平和な一日の始まり。
有能なサラリーマン達は、仕事のネタを捜して日経に目を通している。
或いは顧客への提案書かなにかだと思うが、PCで資料を作っている。
或いは手帳に何か書き込み、アンダーラインとかを引いている。
そして或いは、携帯電話のメールを熱心にチェックしている。
もしかしたら携帯を使って、何かつぶやいているのかもしれないが、兎に角携帯を熱心にいじり回している。

そして彼らはこちらを見ようともしない。
私の姿が目に入っていないのか、目に入れた上で「無視」してるのか、ようするに誰もこちらを気に留めていない。
全く、気に留めていない。

おかしい。
どうも私の目論見は当たっていない様だ。

2010-09-10

湘南新宿ライン グリーン車での我が闘争 6

やがて車内はそこそこ埋まってきて、多くの乗客が、にほんけいざいしんぶん、とか、にっかんこうぎょうしんぶん(という新聞が日本にはあるらしいが、滅多に見かけないのでよくわからない。少なくとも私の住む中部地方の街では売っていないと思う)とかいう、特殊な職業に就いているある一部の人種しか読まないような新聞を読んでいる。
という事は、この車両には、偶然か必然かは知らないが、特殊な人種が集まっているという事なのかな。
特殊という意味では私も同類であるけれど。
で、相変わらず、みなさん私の事は存在しない存在として取り扱っている様だ。
うん、それならそれで良し。
2本目にかかった残りの缶麦酒をグッと飲み干し(今、まだ朝の8時前)、早くも日本酒に移行する(今、まだ朝の8時前)。
それにあたり、深く倒したリクライニングを更に深く倒し込み、靴を脱いでシートに胡座をかく。
周囲の特殊な人種の皆様は相変わらず、私の事は存在しない存在として取りあつかおうとしているが、この辺から、彼らのほんの微かな気持ちの揺らぎが、私に伝わってきた。

「こいつ、タダの田舎モンじゃねえぞ…。田舎者で、かつ恥知らずで、かつアホで、かつアル中で、かつおっさん。これはまずいテポドン級だ」

その通りだ。
否定はしない。
最高級の讃辞として、有り難く承ろうじゃないか。

しかし、何だ。
私は改めて思う。
にほんけいざいしんぶんな奴には負けられないね、と。

真の強者は、いかに弱っちい敵に対しても決して手を抜かず、完膚なきまでに叩きのめすと聞く。
真の強者である私もそうだ。
如何なる相手にも絶対に攻撃の手は緩めないのが信条だ。

そこで、早速次の武器を背嚢から取り出す中年やさぐれソルジャー。
それは…?

2010-09-09

湘南新宿ライン グリーン車での我が闘争 5

ある日の朝の事だが今年の冬になれば46歳を迎えてしまうしがないくたびれた中年男が大船駅に停車している発車前で且つ未だその男しか乗っていない湘南新宿ライン宇都宮行きグリーン車2階中央部分窓際席に座って鶏の唐揚げ及びキムチ等を肴にビールをんぐんぐ飲んでいるのであった。
「ああ、句読点って篦棒に大事だな」という事が、あんたにも良くわかっただろ↑。

閑話休題、ビールを1本、弁当を半分程度食べたくらいになるとぼちぼち人が乗車してきた。
あらかたの予想通り、その略全ては通勤客である。
そしてこれまた予想通りだったのだが、私が普段愛用している安物スーツ(イオンで購入の吊るし)なんか誰も着てない。
少なくともセミオーダ、比較的年齢がアッパーなおっさんは完全なオーダメイドだ。

で、これは殆ど全員なのだが、車内に入るなり否応なく目に飛び込んでくる筈の私をきれーに無視して……
違うなあ、無視って感じじゃねえな
うーんと、無視するというか、これってなんて言うんだろう?

えーっと、この感覚って、表現が少し難しいな。
無視というよりは、そもそも存在しないことにしているという感じ。
つまりね、無視って言うのは無視すべき対象があるからこそ成立しうる行動なんですが、もしその対象がなければ、無視も糞もないでしょ。
そういう感じ。

無視して、もとい、私は存在していないものとして彼らは空いている席に座って行く。
しかし変なのは、私は存在しない筈なのに、何故か私から離れた席から埋まって行くんだ。
おかしいな、おかしいな、おかしいなったらおかしいな、である。
でもまあ、それは多分全くの偶然なのだろう。

で、私の方は発車前にもかかわらず、早くも2本目の缶ビールのプルタブを開けた。
ここからが真の意味での本番である。

2010-09-06

湘南新宿ライン グリーン車での我が闘争 4

で、なんとかかんとか乗り込んだ湘南新宿ライン宇都宮行き。
既に青色吐息ではあるが、私はソルジャーである。
そんな事はおくびにもださず、落ち着いた格好を装ってゆったりとグリーン車に乗り込む。
まず、第一目標は、当然の事ながらグリーン車2階席車両中央部分の座席を確保する事。
車両というのは例えるならば、要するに1本の棒であるから、車両中央部分が最も揺れが少なく、快適である。
さらに言うのであれば、そういうどうでもいい知識を振り回して、我先に良い席に就こうとするのはどちらかと言えば田舎者であるので、実践したまでの事。
階段を登り、グリーン車に慣れ切った人のようにさり気なく車両中央窓際にある極上の席に身を沈め、通路側の席には絶世の美女とかも含めた何人たりとも坐らせないよう荷物を積み上げ、思い切り後方にリクライニングさせる。

どうだ、凄いだろう。
普通の奴だったらできないぜこんな事。
ざまあみろ、このくそったれめが!
 へっ!やってのけたぜ!この俺様はな!

と、鼻息も荒いが、残念な事にグリーン車内にいるのはまだわたしのみであり、この偉業を見守る者どもは誰もいないのがやや残念だ。

で、ここまでは正に朝飯前であり、次の難関は正に「朝飯を食らう事」である。
これはなかなか難関であり、湘南新宿ライン宇都宮行きのグリーン車2階席中央部分で、列車が発車する前の時点で弁当の包みを解き、缶ビールのプルタブをぱしっ!と抜き、二口三口んぐんぐやってから、美味そうに鶏の唐揚げをかじるという芸当は、これはなかなか流石に勇気を要する。

顔を素早く左右に動かし、発車までまだ暫く時間のある車内には誰もいない事を確認する。
OKだぜ、べいべ。
さらに弁当を食い進めるぜべいべ。

発車前の、誰もいない静まり返った車内で黙々とビールを飲み、弁当を食らう私はもうすぐ46歳になる予定です。

2010-09-05

湘南新宿ライン グリーン車での我が闘争 3

ところが、だ。
大船駅なんぞ殆ど20年ぶりくらいに利用(社会人1年生当時の一時期、大船から新宿に通っていたのは既述の通り)するためか、湘南新宿ラインの乗り場がさっぱり解らん。
というか、当時はこんな立派な駅じゃなかったよーな気がする。
まあ兎に角、出だしから早くも田舎もん状態炸裂である。
前述の通り、東海道線も湘南新宿ラインの別系統のやつも宇都宮系統のやつも、同んなじよーな色(湘南色って言うらしいですな)と同んなじよーな形をしているので「あ、あそこじゃん」と思って隣のホームに行ってみると、行き先が「東京」とかになっていて、焦る焦る。
普段の装備であれば、それでも何とかなる。
しかし今回は、可成りの重装備であり、そのために脚が重く、くそ重いレジ袋が掌に食い込む。
レジ袋と掌の皮膚が擦れて熱く、皮が剥けそうな勢いだ。
苦しげな表情で早朝の大船駅を走り彷徨う中年一人。
彼は果たして宇都宮行きの湘南新宿ラインに乗り込めるのか?

ちなみに、
「アホかオマエは。そんなん駅員に訊けばええやん」
と思っている貴方。
貴方は解ってない。
地方出身者が都会の駅で乗り場を訊くとき程、屈辱感を味わうものだ、という事を。
というか、正直に言うと、
「自分が田舎モンであることを都会人には絶対悟らてはならない」
という、正に田舎モンの思考回路は、この年まで生きてしまうとなかなかぬけないものなのさ。