ある日の朝の事だが今年の冬になれば46歳を迎えてしまうしがないくたびれた中年男が大船駅に停車している発車前で且つ未だその男しか乗っていない湘南新宿ライン宇都宮行きグリーン車2階中央部分窓際席に座って鶏の唐揚げ及びキムチ等を肴にビールをんぐんぐ飲んでいるのであった。
「ああ、句読点って篦棒に大事だな」という事が、あんたにも良くわかっただろ↑。
閑話休題、ビールを1本、弁当を半分程度食べたくらいになるとぼちぼち人が乗車してきた。
あらかたの予想通り、その略全ては通勤客である。
そしてこれまた予想通りだったのだが、私が普段愛用している安物スーツ(イオンで購入の吊るし)なんか誰も着てない。
少なくともセミオーダ、比較的年齢がアッパーなおっさんは完全なオーダメイドだ。
で、これは殆ど全員なのだが、車内に入るなり否応なく目に飛び込んでくる筈の私をきれーに無視して……
違うなあ、無視って感じじゃねえな
うーんと、無視するというか、これってなんて言うんだろう?
えーっと、この感覚って、表現が少し難しいな。
無視というよりは、そもそも存在しないことにしているという感じ。
つまりね、無視って言うのは無視すべき対象があるからこそ成立しうる行動なんですが、もしその対象がなければ、無視も糞もないでしょ。
そういう感じ。
無視して、もとい、私は存在していないものとして彼らは空いている席に座って行く。
しかし変なのは、私は存在しない筈なのに、何故か私から離れた席から埋まって行くんだ。
おかしいな、おかしいな、おかしいなったらおかしいな、である。
でもまあ、それは多分全くの偶然なのだろう。
で、私の方は発車前にもかかわらず、早くも2本目の缶ビールのプルタブを開けた。
ここからが真の意味での本番である。
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