2010-07-11

中年の大暴走その2 <謎の関東某所を放浪する8>

トンネルを出ても、無心に歩き続ける。

近くにある歩道橋の手前に、こんな注意書きがあった。
しかも結構沢山貼ってある。















「痴漢の出没地点/この歩道橋の上で露出狂が七月十一日(水)午前(ママ)七時過ぎ出没しました/○○○生徒は十分注意をしてください/○○○立○○○学校」

周囲を見渡すと、近くに比較的大きな道路が走っている割に、ここだけが妙にひっそりとして人目に着かない感じである。
確かに痴漢好適地の条件を整えているように思われる。
近隣学生の皆さんには、ぜひ十分にご注意いただきたいものだが、しかし私が言いたいのはそのポイントではない。

某年7月11日(水)<曜日と日付の関係からすると、今をさかのぼる事25年前、恐らく1995年の事だと思われるが>、ここに独りの痴漢が現れた。

夕方、或いは夜の話ではない。
朝7時過ぎの出来事である。

尋常ではない。
朝である。
朝と言えば、
「あーたーらしいー朝がきたー きぼーのあーさーだ」
であったり、
「あーさはどこからくるかしらー あのうみこえてくもこえてー おとぎのくにからくるかしらあ いーえいえそーではありませんー そおれは あかるい仮定からあーさーはくるくるあさはくる おっはよー おっはよー」
等という明るく希望に満ちたイメージである。
その爽やかな朝の光と清浄な大気の中、この痴漢は現れた訳だ。
朝靄を突いてな。
誠に勤勉、篦棒に見上げた野郎である。
正に文字通り「漢(おとこ)」である。

漢は今、回想している…

あれから25年…
時間は風のやうに、夢のやうに流れて行ったよ…
あのとき35だった私も、今年でもう61になる。
既に老境に差し掛かり、死んだ連れ合いの仏壇に水を供え手を合わせる事だけが愉しみだ。
若い頃、あの朝の歩道橋で犯した深い罪を、背中に背負いながら生きてきたこの半生。
あの歩道橋を通りかかる度に、心が疼く。
すまん、当時の女子生徒よ。
本当に反省している。もうすこし世間並みなサイズであったらよかったが、小さかったことが唯一心底悔やまれるよ。

いや、違うよ。
あんた、誤解しないでくれ。
深く反省しているんだ。
今はもうそんな事はしていないよ。
決してしていない、するもんか。

あの歩道橋だけではな。
 

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