2009-09-23

H市脱力系観光ツアー 鷲沢風穴#2

途中、へんな回が1回挟まりましたが、前回は「そのせいあってか、我々が訪れた日は、ひっきりなしの来客でした」のセンテンスで終わりました。

が、ひっきりなしの来客があったのは、道中しつこくしつこくしつこくしつこく繰り返される案内標識のせいではなく、そこで販売しているお水が結構イケてて、買い求める客が多いためで、殆どはリピーターのようでした。
中にはトラック一杯に積み込んだポリタンクに、次から次へと水を満たしていく可成りコアなリピーターもいる程。
しかし彼らの殆どが、風穴や、次に述べる魅惑的な「科学資料館」を一顧だにせず、足早に立ち去って行くのが誠に残念であります。

ということで、我々仲良し中年二人組は、その水の味見さえせず、まず直行したのは、洞窟入り口の手前横、山の斜面を数m登った所にある「科学資料館」であります。
「科学」と名乗る以上、広くサイエンス関係全体に渡る、非常に重要な資料が満載なのではないかと、科学好きな我々(*1)は既にドキドキです。

草が茂る細い道を滑らないように気をつけながら歩けば、すぐに「科学資料館」に辿り着けそうな感じです。

前回申し上げた通り、建物自体は飯場ライクなバラック小屋だ。
だが、侮ってはいけない。
ホンモノは、自らの外観を決して気にはしない。
ホンモノは、中身だけで勝負するものだ。

自らの外観を気にはしない、ホンモノ「科学資料館」は、手前にある看板に書かれた自らの名称も、なんというか習字みたいなフォントの、やや金釘流の文字で壁面に表現している程の徹底ぶりだ。
これはむしろ、外見で相手を油断させ、中身の充実ぶりで驚かせてやろうという極めて高度な作戦だと我々は見る。

うう、科学資料館、こいつ… 出来る!
その割には、本体に掲げられた看板は、角ゴチック体で書かれた端正なもの。
奴に付け入る隙はそこにしかないであろう。

我々は油断しないよう、慎重に歩を進め、彼に近づく。
M氏も心なしか表情が緊張しているように見える。

彼は更に我々を油断させるためか、自らのボディを泥と埃でまとわせているようだ。
貧乏臭いと見せかけて、実はこいつはそうじゃないんだ。
我々はその事実を同時に感じ、努々油断しまいと頷きあう。
しかし、その埃の臭いが凄い。
我々は、埃の臭いに顔を顰めながら更に彼に近づく。

俺は人間どもには決して負けねえ、どんな汚ねえ手を使っても、埃でもンコ(*2)でも使って、必ず倒す!

そんな勢いで、彼は我々に埃の臭いを激しく浴びせかける。

そのシビアな戦いに、しかし我々はついに勝利した!
今や、彼の入り口は、我々の眼前にある。
もう、ドアを開けるだけだ。
それだけで「この世界の科学の全て」を見る事が出来る。
それは即ち、我々の完全なる勝利を意味する。

興奮を抑え、M君が彼の扉に手をかける。
その横開きの扉に手をかけ、大きく開かんがため、力を込める。
更に込める!
更に込める!!
更に込める!!!
指先が白く変色するくらい、力を込めて込めて込めまくるうぅぅぅー!!!!

「A君、これ…」
というM氏の冷めた言葉が聞こえ、彼の指さす先を見ると、その扉には、荒物屋で50円くらいで売っている南京錠が掛けられていた。
更に良く見ると「閉鎖中です」と書かれた紙が剥がれそうになりながらも、壁にぶら下がっていた。

やはり、我々は彼に勝てませんでした…

(*1)
嘘です。

(*2)
昔、アラレちゃんっていう女の子が、時々使ってましたね。
懐かしい。

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